【金魚すくい】お祭り金魚はなぜ死ぬの?そこには思いもよらない理由が・・・
すぐ死ぬからやっちゃダメ!
夏の風物詩のひとつになっている「すぐ死ぬからとってきちゃだめだよ!」という台詞。
皆さん一度は聞いたことがありますよね。
そう、夏祭りの「金魚すくい」。
子供は誰もがやってみたいと思ったはず。
ポイやモナカですくう金魚すくいが一般的で、たくさん泳ぐきらびやかな金魚たちは魅力的ですよね。
実は金魚すくいの歴史は古く、江戸時代から始まったとも言われています。
でも、せっかくすくってもすぐに死んでしまうというのが通説。
金魚を持ってきちゃダメというお母さんも、もしかしたら子供のころにとってきてすぐに死んでしまった経験があるかもしれません。
熱帯魚屋店員の僕からすれば
お祭りの金魚は取ってきちゃダメです!
というのも、
凄く長生きしてしまうから!
独身貴族の僕ですが、子供がいたとしたら金魚すくいはやらせません。
熱帯魚屋さんに連れて行って、好きな魚を買わせます。
じゃあなぜお祭り金魚が死んでしまうのか、その理由から正しい買い方までご紹介していこうと思います。
- すぐ死ぬからやっちゃダメ!
- 金魚すくいの金魚は弱い?
- じゃあ金魚すくいの金魚はなぜ死んでしまうのか
- 金魚が健康に生きるための『水』とは?
- バクテリアサイクルを作るには?
- まず用意したほうが良いもの
- お祭り金魚から本格アクアリウムへ!
金魚すくいの金魚は弱い?
金魚すくいの金魚は「追い回されて弱っている」「的屋さんが連れまわしているから弱っている」「ちゃんと餌を貰っていない」。
たしかにこういった場合もあるかもしれませんが、実はほとんど当てはまりません。
私の勤める熱帯魚屋にも、ときたま的屋のおじさんが来て「○日に金魚すくいで使うから仕入れておいて」と注文していきました。
基本的には観賞魚の問屋から直接仕入れますが、そのルートの無い小さいイベントの金魚すくい屋さんや、地方のお祭りでは地元の熱帯魚屋さんで仕入れていきます。
荷物を送ったことがある人ならわかると思いますが、重たい荷物を運ぶとお金がかかります。あの量の金魚を送るとものすごい重さなので基本現地調達なんですね。
余った金魚も仕入れ元に買い戻してもらうか、熱帯魚屋さんに買い取ってもらって基本的に持ち歩くことはありません。
つまり、熱帯魚屋さんで買うのとほとんど変わらないんです。
追い回されて疲れているというのはあるかもしれませんが、それは明らかに弱っている金魚や傷のある金魚の場合。
ほとんどの金魚の死因はそこではありません。
じゃあ金魚すくいの金魚はなぜ死んでしまうのか
お祭り金魚が死んでしまう一番の理由は持ち帰り方と飼い方にあります。
ここに注意すれば、金魚はものすごく長生きする生き物なんです。
そもそもまだ赤ちゃん
金魚は、実は10年以上生きる長生きな生き物です。
お祭り金魚はまだまだ赤ちゃんです。
だいたい半年以下の幼い金魚は、上級者でも10匹買えば1匹は死なせてしまうほどデリケート。
なので、飼育する上では細心の注意が必要なんです。
とったらすぐに持ち帰ろう
金魚すくいの金魚は、とったら小さな袋に入れてくれますよね。
金魚をおさんぽしているようであれもかわいく見えますが、実はここが第一関門。
魚は水の中でエラ呼吸をして酸素を取り込んでいますが、そのためには圧倒的に水の量が足りません。
あの袋に入る水は150cc~250ccほど。
おまつり金魚のサイズで、一匹飼育するのに最低限必要な水の量は2Lなので、10分の1ぐらいしか入っていないんです。
ぶくぶくも付いていないのですぐに酸欠になってしまうんです。
また、温度も問題です。
少ない量の水は、外気温であったまったり冷めたりします。
魚は人間よりも温度の変化に弱く、少しの温度変化でも病気になり、温度変化が激しいとそれで死んでしまいます。
とくにまだ赤ちゃんの金魚だとその負担も大きくなります。
なので、金魚すくいで金魚が取れたらチョコバナナやりんご飴を無視してまっすぐ家に帰りましょう!
日本人が知らない「正しい金魚の飼育方法」
金魚はもちろん、ほとんどの魚がそうですが、日本人のほとんどが正しい飼育方法を知りません。
実は魚を飼うときに、すぐに水槽に放してはいけません。
「水槽の水に少しずつ慣らすんでしょ?知ってる知ってる」と思ったあなた、それは正解ですがそれ以前に問題があります。
実は、水道水では魚は生きていくことが出来ません。
正しくは、「長く住むことが出来ない水」なんです。
お祭り金魚を死なせてしまった方は、大体どれぐらいで死んでしまったか覚えていますか?
早くて翌日、長くても1週間以内で死んでしまったという方が多いのではないでしょうか。
それもそのはずで、新しい水槽の水はまだ長く住むことが出来ない水なのです。
人間の生活環境は最低限、食事、排泄、睡眠できるようになっていますよね。
健康を害さないために何が一番大切でしょう?
実は「排泄」です。
人間もトイレのない生活をすると、すぐに排泄物で病気になってしまいます。
魚はトイレに行きませんよね。そのへんで好き勝手に排泄します。
じゃあなぜ池の魚が病気にならないかというと、水自体が排泄物を処理するトイレの役割を担っているからなんです。
金魚が健康に生きるための『水』とは?
排泄物は毒です。食べてはいけません。
これは魚も同じで、排泄物の混ざった水で生活すると死んでしまいます。
まず悪役になるのがアンモニア。
このアンモニアが結構強い毒で、魚に悪影響です。
アンモニアはフンはもちろん、餌からも発生します。
このアンモニアは水槽にどんどん溜まるわけではなく、バクテリアが食べてくれます。
亜硝酸もなかなかな毒で、魚に悪影響です。
硝酸塩にまでなると、魚への悪影響はほとんどありません。
これがいわば水槽内でトイレと同じくフンを除去(フンの毒素を除去)してくれるシステムで、「バクテリアサイクル」と呼ばれています。
このバクテリアサイクルが成り立っていない水槽にいくら注意して魚を入れても、いずれ魚は自分の排泄するフンのアンモニアでやられてしまい、1週間もたずに死んでしまうのです。
バクテリアサイクルを作るには?
バクテリアサイクルを自然に完成させるには、おおよそ3週間から1ヶ月かかります。
バクテリアを沸かすのはそう難しくありません。
水槽を魚を買う環境に整えて、多めに餌を入れておけば、その餌からアンモニアが発生し、それに伴い自然とバクテリアが増えていきます。
ただ、その日の勢いでとってきてしまったお祭り金魚ではそうもいきませんよね。
お祭り金魚を生かすにはどうしたらよいでしょう?
餌は最小限
どういった飼育方法をする場合にも、最初は絶対に餌のあげすぎはいけません。
あまった餌からもアンモニアが出てしまうので、食べ残しの無いよう注意し、食べ残した餌はすくってあげましょう。
お祭り金魚のサイズであれば、1匹に耳かき一杯程度で十分です。
複数いる場合は食べる量が偏らないように注意しましょう。
なるべく大きい水槽で飼う
同じ汚れが出たとして、水の量が多いほうがアンモニアなどの毒素は薄くなります。
少し大きすぎかな?という程度の水槽を選ぶようにしましょう。
5cm程度の金魚一匹なら、30cm以上の水槽を選ぶと良いでしょう。
二匹なら45cm、三匹なら60cm。
ただ、大きすぎると単純に邪魔ですよね。
無理に大きくしなければいけないのは最初だけで、後々水変えや掃除も大変になってしまいます。
なので、水を作る間だけバケツで飼育するのもひとつの方法です。
大きめのバケツで飼育して、その間に水槽を立ち上げておきます。
洗剤や汚れが付いているとそれが金魚に悪影響なので新品を用意しましょう。
魚を飼うとききれいなバケツはなにかと必要になるので、バケツも無駄になりません。
こまめに水換えをする
結局はアンモニアや亜硝酸が水槽に溜まらなければOKなので、水換えでアンモニアを薄めていけば水を作りつつ飼育することも出来ます。
ただどんどん水換えをすればいいというわけではなく、水換えの仕方にも気を使う必要があります。
水換えは、バクテリアサイクルが出来上がった水槽でも月1回程度行うのが理想的ですが、このときもすべて水買えせずに、1/4~1/2程度で十分です。
これはバクテリアを逃がさないため、魚に環境変化の負担をかけないためです。
なので、出来上がっていない水槽の水替えもこれに準じて1/2程度の水換えをしますが、頻度は1日1回行うようにします。
また、先に書いたとおり、魚は水温の変化が苦手です。
なので、できれば汲み置きして常温にした水を使用しましょう。
塩素(カルキ)を抜くためにハイポなど塩素を抜く薬を使用する場合もありますが、汲み置きしていれば自然に塩素は抜けていきます。
ヒーターを付ける場合は、なるべく水槽の水と同じ温度の水を使用します。
この場合はボイラーで水槽の水温と同じ水を作り、ハイポで塩素を抜きます。
ただアンモニアは目に見えないので、水換えで十分アンモニアを逃がせているかわからないのでこれはリスキーな方法でもあります。
バクテリア剤を入れる
自然に増えていくバクテリアですが、実はバクテリアをパックにした商品も売っています。
たとえば「すごいんですバクテリア」や「ろ過するバクテリア」あたりでしょうか。
ただ実際の効果はというと正直気休め程度です。
というのも、バクテリアも生き物です。
なので、ボトル詰めされた状態でどれだけ生きるかいまいち確証がもてません。
バクテリア剤を全否定するつもりはありません。
が、本来バクテリア剤は補助的な役割で、立ち上げ時に使用するべきではないと考えます。
バクテリアの活性剤はバクテリア繁殖の手助けになるとのことで、余裕があれば添加する程度のイメージを持っておくとよいでしょう。
まず用意したほうが良いもの
お祭り金魚を持ち帰るなら、飼育する環境も整えなければなりません。
必要なものと、おおよその予算をチェックしてみましょう。
水槽
取り急ぎバケツで飼育する場合にも、水槽は同時に購入してバクテリアサイクルを作っておきましょう。
水槽のサイズは、通常であれば2匹までなら30~45cm水槽で、5匹までなら60cm水槽で飼育が可能です。
価格は、45cm水槽までなら3000円あれば足りるでしょう。
ホームセンターには安い水槽セットがあり、簡易的なエアポンプセットが付いている場合もありお得です。
砂利
水槽のそこに敷く砂利は、見た目を引き立たせるだけでなく、バクテリアの住処にもなるので実は大事な飼育用品です。
水槽のそこに満遍なく2、3cm敷ける量を購入しましょう。
思いもよらない汚れが付いている場合があるのでそこらの公園から取ってくるのはNGです。
安いもので2kg800円ほどからあります。
エアポンプor水草
エアポンプは、いわゆるブクブクのことです。
水槽のセットについていることが多いですが、別売りでも1000円程度で用意されています。
金魚の数が少なければ水草だけでも飼育することは可能です。
「カモンバ」「アナカリス」がおすすめです。
アナカリスは丈夫で長持ちで、カモンバはあまり長持ちしない代わりに、金魚の餌にもなります。
餌
餌は様々な種類がありますが、金魚におすすめなのは「テトラフィン」です。
食いつきがよく、与えやすいフレークタイプです。
小さいパックなら400円ぐらいのものもあります。
カルキ抜き(ハイポ)
水道水の塩素を抜くために必要な薬です。
汲み置きできるなら必要ありませんが、最初の立ち上げ時に必要になりますし、ひとつあると便利です。
価格は安く、最近ではダイソーでも入手できます。
5000円あればすべてそろう
お祭り金魚を2、3匹買う程度であれば、5000円あればすべてそろいます。
小さい水槽なら、最低限でそろえると3000~4000円でも可能でしょう。
60cm水槽になると、水槽自体が高くなるのでそのぶん値段は高くなっていきますが、それでも7000円程度ですべてそろいます。
お祭り金魚から本格アクアリウムへ!
ショップ勤めの私は、絶えずお祭りの日程をチェックしていました。
なぜなら、お祭りの日の夕方には水槽がバカ売れし、今回紹介したような内容の接客対応に追われるからです。
そしてその波は翌週の週末にまた来ます。
ちゃんと実践できた方の多くはお祭り金魚を家族にできますが、残念ながら失敗してしまった方がまた来店するのです。
お祭り金魚が死んでしまうと、空いた水槽になにか入れようと魚を買い求めに来られます。
このとき、私が必ず言うのが「水槽をしっかり立ち上げてからの方が良いですよ」と、「熱帯魚もいかがですか?」この2つです。
実は、金魚より熱帯魚のほうが飼いやすいのです。
金魚も熱帯魚もわけへだてなく好きな私としてはちょっと複雑ですが、お祭り金魚がアクアリウムの間口になっているんです。
もちろん金魚をしっかり飼育できた方も、その後水槽を増やして熱帯魚を飼ってくださることもあり嬉しい限りです。
ぜひお祭り金魚で作った入り口から、アクアリウムに興味を持ってみるのもよいのではないでしょうか。
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