身近でかわいい両生類!プロが教えるニホンアマガエルの日本一簡単な飼育方法
カエルというと女子の嫌いな生き物No.1。のはずが、なぜか最近人気です。
筆者の実家は兼業農家で、土地柄アマガエルがたくさん居ます。
雨上がりに野良猫がアマガエルを弄んでいるのを見て救出し、興味もあったので飼育を始めました。
ツイッターにあげた所、なぜか女性からいいねが多くびっくり。
アマガエルで検索してみると、なんとアマガエルを飼っている女性が多くて更にびっくりです。
女性がカエル嫌いという時代は終わったんでしょうか。
というわけで今回は、唐突にアマガエルの飼育方法を書いてみようと思います。
両生類は難しいというイメージがあるようですが、実はアマガエルはとっても簡単に飼育できるんですよ!
アマガエルとはどんな生き物?
日本でアマガエルといえば「ニホンアマガエル」を指します。
最大で体長5cm程度の小さなカエルです。
田舎や川辺にある自動販売機にくっついている姿も良く見ますし、日本全国に広く生息しているので日本で一番なじみのある両生類かもしれませんね。
鮮やかな緑色のイメージが強いですが、擬態能力が高くグレーに斑模様で環境に溶け込みます。
青いアマガエルも存在しますがこれは遺伝子異常で稀に生まれるもので、種類として確定していません。珍しく希少価値があるので、発見したらぜひ捕まえて動物園や水族館などに寄贈してみてはいかがでしょうか。
アマガエルは泳ぎが得意なので、水辺の生き物というイメージが強いですが実は森や林、背の高い植物などを好む「樹上性」のカエルです。
水辺でよく見かけるのはオタマジャクシが水の中で生まれ陸上にあがり、産卵のため水辺に戻るからです。
餌は「動くもの」に限定され、主に口に入る昆虫類です。
口に入らないサイズの昆虫には興味を示さず、また動いていないと生きていても捕食しません。
温度は広く適応し、15~30度程度であれば活発に活動します、冬でも夏でも室内であれば十分ですね。
冬場は土の中で冬眠して越冬します。
太字にした部分が飼育環境作りに大切な部分なので意識してみましょう!
アマガエルの飼育環境を作ろう!
アマガエルの飼育環境は、実はそう難しく考えなくても大丈夫です。
住んでいる場所や、上記した生態を抑えれば、用品の価格もそう高くないのであまり予算はかかりません。
アマガエルの飼育に適したケース
アマガエルを飼育するケースのポイントは「ある程度の高さがあること」です。
おおよそ30cmあれば十分でしょう。幅は20cm程度で十分です。
理由のひとつは、カエルは湿度が重要なことです。
飼育ケースに高さがあることで、湿度を欲しているときは地面の近くに、湿度が高すぎる場合は乾いた上部に移動できます。
このため、立体的なレイアウトができる高さのあるケージがおすすめです。
もうひとつの理由は餌にあります。
基本的にアマガエルの餌は生きた虫なので、低い水槽だと管理するときに餌が逃げやすいです。
ある程度高さがあれば、アマガエルが取り逃がした虫がゲージ内に残っている場合でも管理しやすくなります。
汚れの掃除を重視するとキズのつきにくく長持ちなガラス水槽がおすすめですが、ガラス水槽は蓋のバリエーションが少ないことと、餌の問題を考えると昆虫用のプラケースを流用するのが一番お手軽でコスパもいいでしょう。
アマガエル用の水槽レイアウト
水槽を買ったら、水槽内に隠れ家などをレイアウトしてあげましょう。
いわゆる「テラリウム」といわれるレイアウトが参考になります。Googleで画像検索してみてくださいね。
底砂はソイルがおすすめ
アマカエルは体の大きさの割りに立派なフンをします。
いちいち掃除するのも大変なので、土を入れて自然に分解してもらいましょう。
観葉植物の土でも農薬が入っていなければ問題ありませんが、アマガエルの体や水槽にまとわり付いて見た目的にもよくありません。
爬虫類飼育用に土を固めた「ソイル」といわれる商品があり、保湿効果があり粒状なのでカエルの体にも付きにくいです。
我が家では熱帯魚用のソイルを流用しています。熱帯魚用のソイルはダイソーにもあるのでおすすめです。
流木で高さと隠れ家を作ろう
アマガエルは樹上性のカエルで、平地を歩くよりも草木の上に登り立体的に動くことを好みます。
このため、流木などで縦に動ける環境を作ってあげるのが理想的です。
流木は水を吸って湿度を高く保つ効果もあるので、アマガエルの飼育には理想的です。
休むときは地表の影になっているところに隠れるので、なるべくアマカエルの体のサイズにぴったりの隠れ家(シェルター)を用意してあげましょう。
これも流木でOKです。石でもOKですが、万が一崩れて隠れているアマガエルが潰されないように注意しましょう。
見た目を気にしなければ、割った鉢なども喜びます。
観葉植物とコケで緑を
流木だけでは見た目的に味気ないという場合は、観葉植物を入れてあげるのもおすすめです。
アマガエルは環境によって色を変えるので、緑が豊富であれば鮮やかな緑色に、流木などで暗い色の場合は白っぽく変化します。
写真にある我が家の水槽でもダイソーの100円観葉植物を入れていますが、すいません種類を忘れました。
観葉植物はアマガエルの飼育と並行して行おうとすると根ぐされなどで枯れやすいので、管理が大変そうであればビニールで出来たフェイクプランツでもOKです。
色に左右されるので、葉っぱにこだわらず緑色であればなんでも擬態します。
底面に偽者の芝を敷くのも有効ですが、フンが分解されないので掃除がちょっと大変になります。
最近人気のコケを入れてあげるのもおすすめです。
なるべくバラけにくく、湿気に強いハイゴケやミズゴケをおすすめします。
水場はあると喜ぶ
霧吹きなどで水を定期的にかけていれば水場は無理に作る必要はありませんが、アマガエルは体が乾くと水浴びしたがります。
泳げるほどの広さは必要ないので、プールのイメージで小さなタッパーなどに水を張って入れておいてあげるとよいでしょう。
写真にある我が家の水槽も、手前に浅い水場を作ってあります。
アマガエルの飼育環境はこれで完成です。
どうでしょう?イメージより簡単ですよね。
予算としては、無理にこだわらなければ2000~4000円でしっかりしたものが出来上がります。
上で紹介している我が家の水槽は、オールガラス水槽が2000円、底砂のソイルが500円(ダイソー)、観葉植物が3つで300円、流木が300円、バークチップが100円、コケが300円と3500円ほどです。値段の割には良く出来たと自画自賛しています。
長くなったので続きはリンクから。
アマガエルの飼育管理
飼育管理もほぼお子様でもできる簡単な内容です。
コツが必要なのは給餌ぐらいでしょうか。順を追って説明していきましょう。
湿度管理(霧吹き)
何度も言いますが、湿度管理は重要です。
もしカラカラに乾いた状態が続くと死んでしまいます。
具体的に言えば、湿度70~90%が理想的です。
最近は百円ショップにも湿度計があるので入れてあげるのもいいですが、水浴び場を用意してあげて、土が雨上がりのように十分濡れていれば細かく管理する必要はありません。
主に霧吹きで水をかけてあげる作業になりますが、この頻度や量は飼育するケージの大きさや気温などによって変わるので、こまめにチェックして霧吹きしてあげるようにします。
観葉植物を入れている場合は、水のあげすぎで根ぐされに注意しつつもアマガエルが乾いてしまわないように細心の注意を払いましょう。
掃除
アマガエルの水槽の掃除はほとんど必要ありません。
ソイルを入れていない場合はフンの掃除が必要ですが、必須ではありません。
ただしソイルも徐々に汚れていくので、年に1回程度入れ替えてあげるとよいでしょう。
湿度が高い環境ではカビが発生することがあります。
石や流木に付いた場合は煮沸消毒し、ソイルに付いた場合は取り除いて捨てましょう。
餌の種類と量
僕が撮影した中でもベストショットの写真です。ハエを狙ううちのアマガエルちゃん。
アマガエルを飼育する場合、餌が最大のポイントです。
アマガエルは動くものしか食べないので、生きた餌が基本になります。
口に入るサイズなら、ハエ、クモ、コオロギ、イモムシ、ガなどを食べてくれます。
購入する場合はヨーロッパイエコオロギ(イエコ)やショウジョウバエ、ミルワームなどが対象になります。
イエコは口に入る小さなものを選びます。1匹10~20円ほどです。
ショウジョウバエはウイングレスと呼ばれる飛ばないタイプがあり、与えるときも捕食するときも楽です。こつをつかめばどんどん自家繁殖させることも可能でコスパがいいのでおすすめです。
ミルワームは鋭い歯とあごがあるので、頭を取る必要があり初心者にはお勧めしません。
餌の量は、飼育しているアマカエルの頭と同じ大きさの餌を、2日~3日に1回与えます。
あげすぎると消化不良を起こす可能性があり、少ないと餓死してしまいます。
お腹がポテッと膨らんでいる状態がベストなので、状態を見て量を調整してあげましょう。
ある程度のサイズになり、人間に慣れれば生きた餌以外も食べてくれるようになります。
カエル用の練り餌があるので、これをガラスの棒などにつけて食べさせます。
ただしこれはかなり時間がかかる方法ですし、すべてのアマガエルが食べてくれるわけではないので、基本は上記した生き餌がメインになります。
虫に抵抗がある場合は飼育をあきらめましょう。
このように、飼育自体はとても簡単です。
熱帯魚のように水質管理などもなく、哺乳類のようにこまめな掃除もありません。
唯一、飼い主側が餌に抵抗がないかどうかが最大の問題になります。
正直僕自身コオロギが触れず、ちょこまか逃げるイエコを器用にピンセットでつまんで与えていましたが、1週間もすればそのわずらわしさから手でつかんで投げ入れるまでに慣れました。
コオロギに慣れれば様々な爬虫類を飼育できるようになるので、ここでひと踏ん張りしてみましょう。
アマガエルの飼育をもうすこし掘り下げてみよう!
このように飼育方法にはほとんど難しいことがありません。
せっかくなので、もう少し掘り下げて考えてみましょう。
アマガエルを入手する方法は?
アマガエルは買うというよりも、採取してくるのが一般的でしょう。
繁殖地になる田んぼがある田舎ならほぼ確実に生息しています。
ただ農家はあまり敷地内に近づかれるのを好まないので、近くの小川や草原を探してみましょう。
とくに雨上がりは良く見つかります。
繁殖地の少ない都心にはあまりいないので、郊外で探す必要があります。
持ち帰るときはケースに草を十分に入れ、可能ならば脱脂綿をあらかじめぬらして入れておくとよいでしょう。
購入も不可能ではありません。
インターネットでは300~800円で販売されています。
ヤフオクにもよく出品されているので覗いてみましょう。
カエルの卵・オタマジャクシから育てる方法
カエルは言わずもがなオタマジャクシの成長した姿です。
カエルの卵を見つけた場合は育ててみましょう。
カエルの卵の種類を見分けるのは少しコツがいりますが、良く見かけるカエルの卵は2種類です。
一つ一つのツブがしっかりしたジェルで覆われているもの、もうひとつはチューブ上に卵の粒がつながっているものです。
前記したものがアマガエルの卵、もしくはツチガエルの卵です。ツチガエルは関西以南に多いので、寒い地域で平地ならほとんどの場合アマガエルです。
チューブ状の卵はヒキガエル(ガマガエル)の卵です。ガマガエルはアマガエルと飼育方法が違いますので、機会があればご紹介します。
綺麗な十分の量の水に入れておけばオタマジャクシが生まれます。
オタマジャクシの飼育は金魚とほぼ同じで、水槽に塩素を抜いた水を入れ、弱めにエアレーションします。
餌は金魚の餌(フレーク状)か、煮たホウレンソウがおすすめです。
後ろ足が生えたら陸地を用意してあげましょう。けちけちせず広い陸地を用意してあげます。石など自然のものにこだわらず、タッパーなどでも大丈夫です。
だいたい2ヶ月ほどで立派なアマガエルになります。
最初は飼育ケースにバナナの輪切りを入れ、コバエを湧かすのが楽でおすすめです。
上記したウイングレスのショウジョウバエや、イエコのSSサイズなどでもOKです。
多すぎて逃がす場合は、必ず採取した場所に逃がしましょう。
遺伝子の混濁が起こり、地域のアマガエルの特性を消してしまう場合があります。
アマガエルの繁殖方法は?
繁殖方法自体は簡単なのですが、一筋縄ではいきません。
アマガエルを繁殖させるポイントは
- 成熟したアマガエルのペア
- 繁殖期に向けて十分な餌
- 十分な水の量
この3つだけです。
ただ紐解いて考えると、結構大変な作業です。
まず成熟したペアといっても、オスメスが1匹ずついればいいというわけではありません。
アマガエルの産卵は、メスにオスが抱きついて行います。
このため、相性が悪いとうまくいきません。
つまり、複数飼育しているなかで相性のいいペアを見つけるので、複数の成熟したアマガエルを飼育できる環境を確保する必要があります。
産卵にはたくさんのエネルギーを使います。
メスは卵を作るために、オスは精子を作るためにたくさんのたんぱく質が必要です。
つまり大量の成熟したアマガエルに十分いきわたる餌を確保する必要があるのです。
費用もかかりますし、管理面でも大変ですよね。
アマガエルは水辺に産卵します。
なので、十分な広さの水辺を用意する必要があります。
アマガエルの卵は大きい塊でソフトボールぐらいの大きさになります。
つまり、大量の成熟したアマガエルを飼育しつつ、産卵できる水場を確保できる大きな水槽が必要になります。
成熟したアマガエルをオスメス合計で5匹飼育し、水辺を確保しようと思ったら最低でも90cm水槽が必要になります。
なにより大変なのがオスの鳴き声です。
実家の農園の向こう側には、アマガエルたちが産卵する田んぼがあります。6月の末にはメスを求めたイケメンアマガエルたちの大合唱が風物詩になります。
しかしこの田んぼ、実は我が農園を隔てた約1km先にあるんです。
つまり1km先にも聞こえるほど大きな声を発するんです。
これを部屋の中で発せられたらと思うとぞっとしませんか?
しかも鳴くのは夜中です。
もう繁殖どころか飼育するのもいやになってしまいそうです。
なので、できれば繁殖させるのはやめましょう。
アマガエルの冬眠方法
アマガエルは北海道の冬でも越冬できる生き物です。
その方法は冬眠で、飼育下でも冬眠させることは可能です。
方法は簡単で、まずはもぐれる十分な量の土を用意してあげること。
これはソイルではなく、腐葉土など柔らかい土がおすすめです。
アマガエルは本能的に冬場も土の中は凍らないのがわかるので、気温が下がると土の中にもぐって穴を作り冬眠します。
5度を下回らない場所で保管できる場合は、土ではなく飼育ケージにミズゴケを敷いてあげても大丈夫です。
冬季保管する場所は、10度を上回らず、0度を下回らない場所にして上げましょう。
10度以上になると起きてしまい、餌を必要とします。飼い主がそのまま気づかないと餓死してしまいます。
0度を下回ると、ケースに入れている量の土では凍ってしまいます。さすがに凍結するとアマガエルも死んでしまいます。
冬眠はアマガエルが生死をかけた一大イベントで、準備やロケーションが不十分だと死んでしまいます。
飼育環境においても同じで、アマガエルが冬眠から明けなかったということはよくある話です。
人間が不愉快に感じないレベルの室温であれば冬眠しようとしないので、保温器具をつけて冬眠させずに飼育するほうがおすすめです。
鳴き声がうるさいときの対処法は?
アマガエルのオスの鳴き声はとてつもないボリュームです。
もし飼育しているアマガエルがオスだった場合、ほぼ確実に梅雨~初夏に鳴き始めます。
一番いい対処法は自然に帰してあげること。
メスにも出会えますし、飼い主もハッピーです。
もちろん帰すときは採取した場所に放してあげましょう。
少し良心があるなら、出会いが多そうな水辺に放してあげるといいでしょう。
カエルの大合唱の時期はその年の気温によって違い、梅雨~初夏の気温上昇に反応して繁殖行動に出ている可能性が高いので、温度をそれより低めにしてあげると泣き声を抑えられる可能性があります。
逆に夏に入り温度が上がりきると鳴かなくなるので、温度を上げてあげることでも鳴かなくなる可能性があります。
また昼に鳴くことはまれです。基本的に大合唱は18時過ぎの日が落ちた夜に始まり、明け方に向けて静かになっていきます。
なので水槽に明かりを付けておけば夜も鳴かず、昼間は隠れ家で眠ってくれる可能性もあります。
とはいえ、これはあくまで農業従事者のカンなのでまったく確証はありません。
また、生き物好きとしては生き物本来の特性を無理やり抑えることになるので、できれば自然に返してあげて欲しいと思います。
アマガエルはいいぞ
このようにアマガエルはとても飼いやすい生き物です。
- 立体的に動ける飼育環境
- 十分な湿度
- 生き餌
この三つがそろえば初心者にもおすすめの生き物です。
夏休みの自由研究にももってこいの生き物だと思います。
ただデメリットもあり、
- 生きた虫を入手し与える必要がある
- 爆音で鳴く(オス)
この二つは十分理解した上で飼育する必要があります。
トノサマガエルやサンショウウオなど、年々数が少なくなっている国産の両生類は多いです。
この機会に、ぜひ国産両生類代表のアマガエルを飼育して、両生類への理解を深めてみてはいかがでしょうか。