ホームセンターで熱帯魚を買う場合のポイントと注意点
昔は町に一店あった熱帯魚専門店ですが、残念ながら最近はかなり数を減らしています。
そんななか、熱帯魚を買うお店として熱帯魚専門店よりもホームセンターが一般的になりつつあります。
工具や生活用品などを買いに立ち寄って、目にした熱帯魚に心を奪われて飼ってみたいと思った方も多いのではないでしょうか。
しかしホームセンターにはホームセンターなりの販売方法があり、専門店とはやはり違います。
今回はそんなホームセンターで熱帯魚や金魚を飼う場合のポイントや注意点について考えてみましょう!
ホームセンターはアクアリウムの入り口としておすすめ
ホームセンターの熱帯魚コーナーにも様々ありますが、どこでも共通したメリットは「アクアリウムの入り口に良い」という事でしょう。
ホームセンター側もそこを理解しているので、生体のラインナップが初心者にも飼育しやすいものを中心に展開しています。
これには売上を意識しただけでなく、お店側の管理の面での問題もあります。
珍しい熱帯魚や高い熱帯魚は飼育も難しいことがあり、しっかり知識がある店員を常駐させて備品にもお金をかけた管理が必要になるからです。
珍しい魚を飼ってみたい、こだわった熱帯魚を飼育したいという場合には少し弊害にはなりますが、アクアリウムの入り口としてはむしろ適しているのではないでしょうか。
ホームセンターの熱帯魚コーナーには二種類ある
ひとくちにホームセンターの熱帯魚コーナーといえど、二種類あります。
具体的には「直営型」と「インテナント型」です。
それぞれの違いを考えてみましょう。
直営型の熱帯魚コーナー
直営型とはそのままの意味で、ホームセンター自身が運営している熱帯魚コーナーのことです。
たいていは水槽が数十~100個程度で、初心者向けの生体を揃えています。
管理も主にホームセンターの店員が行い、管理のレベルはまちまちです。
直営型で専門店並の品揃えの場合が多いですが、基本は用品を売るための取り扱いで、飼いやすい生体を揃えている場合がほとんどです。
最近はホームセンターも大規模化し、それぞれの分野で専門店並の品揃えをもつ場合もあります。
そういった店舗では直営型の熱帯魚コーナーでも専門店顔負けのラインナップが楽しめます。
インテナント型の熱帯魚コーナー
インテナント型とは、ホームセンターの中にありながら運営は別な会社が行っている熱帯魚コーナーです。
わたしもこのインテナント型に近い形態で勤めていました。
ホームセンターからすると、専門的な知識がある店員が必要で、死んでしまい負債をかかえる可能性の高い熱帯魚を、別な会社に委託することで用品の売上を得ながらテナント代も貰えるという美味しい運営方法です。
運営している会社は熱帯魚やペット用品専門店が行っている場合が多く、ホームセンターを間口にアクアリウム人口を増やして自分のお店に客を運ぶというメリットもあります。
生体の売上が収入に直結するので、初心者から上級者まで納得してもらえるようラインナップも幅広く、管理もある程度信用できます。
インテナント型は場所こそホームセンターですが、中身はほぼ熱帯魚専門店なので熱帯魚専門店に比べて特別注意することもありません。
ひとつあるとすれば、テナント代が上乗せさせるので生体の価格が多少高いというデメリットです。
ホームセンターのキープ水槽は病気が回りやすい?
キープ水槽が正しい用語かはわかりせんが、僕が勤めていた熱帯魚屋では「販売用の魚を入れておく水槽」のことを指していました。
ちなみに販売せず見本としておいておく水槽を展示水槽と呼んでいました。
このキープ水槽ですが、たとえば100本あったとしてすべて個別に管理するのはとても大変で手が回りません。
そこでたいていのホームセンターでは「集積ろ過」の什器を仕様しています。
これは水槽の下に大きなろ過装置を設置して、すべて一括で管理できるという優れものです。
ろ過装置の掃除が一ヶ所で済むことや、ヒーターも各水槽に配置しなくて良いメリットがあります。
ただこの集積ろ過にも問題があって、すべての水槽をひとつのろ過装置で賄うということは、ひとつの水槽やろ過装置に問題が起こるとすべての水槽に水が回ってしまうというデメリットがあります。
たとえば病気が顕著な例で、ひとつの水槽で発生すると、同じろ過装置から水を回している水槽すべてに蔓延してしまう可能性があります。
また水質もすべて同じになってしまうので、たとえば弱酸性の水を好む魚と、弱アルカリ性の水を好む魚が同じ水で飼育されている場合があるんです。
どちらかの種類に負担がかかっている場合があり、水あわせで弱りやすい可能性が出てきてしまいます。
つまり、フィルターの掃除や保温など通常の管理は簡略化できますが、よりトラブルを発生させない丁寧な管理が要求されるのです。
こういった理由から、わたしは勤めていたショップに集積ろ過の水槽を設置するのは反対しました。
もちろん悪いものではないですが、病気の管理が大変すぎて、お客さんに安心して購入してもらおうと思うと管理コストと売上が見会わないからです。
この特性を理解して売っていればなんの問題もないんですが、残念ながらたいていのホームセンターでは基本的な管理コストの安さだけを考えて、お客さんに魚を売り渡す段階までは意識していません。
逆に、集積ろ過で状態のいい水槽をキープできているのであれば、その店舗の生体の取り扱いに対する本気度もわかります。
管理・店員の質
什器がどうであろうと、結局は管理の質で決まります。
ホームセンターの場合、規模にもよりますがたいてい薄給でバイトが多いのであまり人が集まりません。
さらには専門の販売員を置かずに、他の売り場と共通の扱いである場合もあります。
なので、安くても知識があってアクアリウム関係の仕事がしたい!という人の才能や知識が生かされていないと言うシーンも多々あります。
逆に専門の販売員をおかずに、他の担当者の片手まで管理させている場合もあります。
昔、あまりの管理のひどいお店を見かねた熱帯魚好きの青年が、自分が助けたいと思ってアルバイトに応募したは良いものの、時間に終われて結局なにもできなかったと言う話もありました。
彼は今別な熱帯魚店に勤めています。
店員さんの知識に関しては、本人のやる気と仕事をする上での経験でいくらでも補えますし、実際ホームセンターの熱帯魚担当でわたしよりはるかに知識があり接客も上手な方は何人もいますし、わたし自身信頼してそのお店で生体を購入します。(残念ながらそういう方は辞めてしまったり独立したりしますが…)
ただ運営する会社が生体管理を甘く見ていればどうにもなりません。
ある程度の予算を出してもらえなければ質のいい餌は与えられませんし、電気代や水道代に目をつけられれば温度管理や水換えを控えなければならない場合もあるでしょう。
ホームセンターの管理の問題に関しては店員の知識うんぬんではなく、企業の生体販売に対する意識も根深い問題であると言えます。
びっくりするほどいい個体が見つかることも?
一見悪いことばかりに見えるホームセンターの熱帯魚売り場ですが、陰ながらメリットもあります。
たまにびっくりするほどいい魚が驚くほど安い価格で売られていることがありました。
雑多に入荷した熱帯魚や金魚のなかにいいものが入っていることがまれにあるんです。
わたしはベタが好きなんですが、以前キングクラウンに近いクラウンテールが800円で売られていたことがありました。
おそらく流通のどこかで紛れ込んだか、傷物として養魚場が安く流したものでしょう。
近所のホームセンターでは、ミックスで入荷したらんちゅうに優良血統がいたりしてびっくりすることは多々あります。
後々わかった話ですが、問屋が地元の金魚ブリーダーと仲がよくて、定期的に品評会レベルでない個体を安く卸してもらっていたからだそう。
問屋としても高い値段で売りたいところですが、専門店が少なく販路がなく泣く泣く安く流したのかもしれませんね。
また、生体は家電などと違い、長く売れずに成長すると価値が出る場合もあります。
エビなんかは抱卵したりもしますね。
わたしが熱帯魚店に勤めていたときには、常連さんから「あそこのホームセンターで仕入れて売れば儲かるぞ!」とまで言われていたほどです。
こういったラッキーもあるので、ホームセンターでもこまめに見ておくとなにか掘り出し物があるかもしれません。
こだわるなら専門店で購入した方がおすすめ
とはいえやはり管理が雑多だと不安もあります。
下手な管理をしていると、持ち帰ったあとに急死することもあります。
なので個人的には信用できる専門のほうが安心ではないかなと思います。
もちろん専門店並、それ以上の管理をしているホームセンターも少ないですが存在します。
店員さんも、アクアリウム関係の仕事がしたいが地元に就職口がなく、ホームセンターに勤めて小さいながらも夢をかなえている方もいます。
初心者におすすめのホームセンターですが、逆に目が肥えてから信頼できる管理のお店を見つけて掘り出し物を探してみるのもいいかもしれませんね。